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冬季営業時間 ー 18時閉店で思ったこと

 今年年始から2月末まで、「冬季営業時間」と称して、平日通常19時の閉店を1時間早め、18時までの営業とさせていただいております。

 

お仕事帰りに立ち寄ってくださっていた皆さまには、18時で閉店になった店の前でがっかりなさった方も少なくないのではないかと思います。申し訳ありません。

 

毎年のことですが、お正月が過ぎ、気持ちも新たにさぁがんばろう!と営業を再開する1月、ハムソー屋には文字通り「冬の時期」が訪れます。雪が降れば人影もまばら、凍える寒さに真っ直ぐ家路を目指す方が多いせいか、17時を前にして夜の帳が下りると来店ゼロ…という日も。

 

19時まで開けていなくてもいいのかな…と思っていた中で、今年は電気やガスなどの燃料代の値上げが相次いで発表されました。物価の高騰も続いています。従業員の賃上げも実施します。コストと営業時間のバランスを真剣に考える必要に迫られました。

 

こうした背景があり、1・2月は18時閉店の冬季営業時間を実施しております。お客さまにとっては不便なことだと思いますが、正直なところ、私たちにとってはプラスの効果が大きいなと感じています。

 

一つには、私自身を含めスタッフの作業効率と意識の向上があります。

営業時間が1時間少なくなる分、仕事もその時間内で終わらせないといけません。今までは18時以降も売上のチャンスがあったのですが、それを自ら放棄した分、営業時間内にご来店いただくお客さまによりご満足いただけるような商品とサービスの提供が求められます。

 

ありがたいことに、アインベルクで働いてくださっている3名のスタッフの方々は、私たちの考えや思いをちゃんと受け止めて行動してくださいます。そんなスタッフの皆さんを見て、私自身や店主も刺激を受けています。

 

また、「ワークライフバランス」という観点でも、1時間営業時間を短くしたことが大きな変化を生んでいます。

 

基本的に、職人である店主が売る物を作らないと商売にはなりません。ですから、店主は常に製造に追われています。「定休日」とは店頭販売をお休みする日という意味で、店主にとっては工房で製造に没頭する日を意味します。

 

そんな休みのない定休日を毎週過ごしている店主は、今年50歳。30代の修業時代のような気力と体力…というわけにはいかないようです。好きなことを仕事にしているという理想とは裏腹に、休みなく働き続けなければいけない現状は、嬉しくはないはずです。

 

平日1時間店を早く閉める分、店主は工房での仕事をなるべく早く終わらせて家に帰ってくるようになりました。

 

以前は21:30就寝を目標に娘を急き立てる毎日でしたが、その夜のルーティンに少しゆとりが生まれました。娘が店主と一緒に夕食を食べる日が増え、彼女は嬉しそうです。

 

家での時間が少し増えたことで、店主が娘の寝かしつけを買って出てくれ、お布団で本の読み聞かせをするのが彼らの日課になりました。この冬は毎晩『ナルニア国物語』を読んで聞かせているようです。

 

父親の読む物語を聴きながら眠りに落ちる娘は幸せだなーと思います。こんな日がずっと続くといいのになぁ…。

 

結局、私たちがお酒を飲み始める時間は以前と変わらないのですが、娘とちゃんと過ごせる時間、ゆっくりお風呂に入れる時間、きちんと夕食の準備ができる時間…、私と店主が1時間家で過ごす時間が増えたことで、少し気持ちのゆとりを手に入れることができました。

 

これが世に言う「ワークライフバランス」なんだね、と今実感しています。

 

気持ちにゆとりができると、仕事のパフォーマンスが上がります。仕事の質も丁寧になります。仕事に落ち着いて向き合い考えることができます。店主と私がお酒を片手に語り合う時間は以前とさほど変わりませんが、商品開発や販売方法、接客や資材のこと…、お店に関わる様々なことをじっくり話し合えるようになりました。

 

店主はアインベルクにとって替えのきかない人材です。店主が作るものがアインベルクのすべてです。ハムソー製造の技術は一般的には誰でもちゃんと学べば習得できるものかもしれません。でも、店主が持つ情熱やセンスや愛情は、余人に代えがたいものです。今回の冬季営業時間の導入で、店主がこれからも長くこの仕事を続けていくためには何が必要か…を考える機会となりました。

 

すべての人に等しく限りのある時間です。仕事もプライベートも、コストも売上も、ベストバランスを引き続き探していこうと思います。

 

先月・今月と営業時間を短縮させていただきましたが、3月からは平日19時までの営業に戻ります。春の訪れとともに、お客さまのご来店が増えるかな… と期待しています。

 

今後も状況に応じて営業時間や営業日が変更になることがあるかもしれません。どうか寛大なお心でご理解をいただけましたら大変幸いです。引き続き、皆さまにご愛顧いただけるように頑張っていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。