· 

戦争とマスタード

秋が深まり、日が落ちるのが早くなりました。

 

ついこの前までは半袖だったのにな、とフランネルのシャツやウールのセーターをクローゼットから引っ張り出しながら、矢のような月日の経過にため息が出てしまいます。

 

一方で、ウクライナの人々は一向に終わらない戦争の中でまったく逆の気持ちでいるのかもしれません。

 

ヨーロッパから輸入する物品の値上がりや流通不足は、困ったなとは思いつつも、私の時間の感覚を遅らせるほどの影響ではまだありません。

 

とはいえ、各種輸入業者やサプライヤーからの相次ぐ値上げや欠品の通知にはさすがに気持ちが重くなります。

アインベルクで作る製品は、スパイスや資材などヨーロッパ由来のものを多く使っています。

店主は私以上に胃が痛い思いをしているのでしょう。

 

この戦争が始まって間もない頃、マスタードの値上げがインポーターから通知されました。

アインベルクではドイツとオランダ製のマスタードを販売していますが、マスタードの原材料の大半はウクライナとロシアから調達されているのだそうです。そうであれば値上げは当然の成り行きです。

 

マスタードがなくても私たちの日頃の食生活は成り立ちますし、アインベルクのソーセージはマスタードなしでも美味しく食べていただけます。

でも、人生にもちょっとスパイスが必要なように、やっぱりマスタードがあるとお肉をより美味しく楽しめます。

 

ドイツ・バイエルン州の老舗メーカー『ヘンデルマイヤー』のマスタード:

 

私の一押しです。この黄色のチューブは中辛で、コクがあって香りがよく、マイルドな酸味がお肉の脂を中和し、後からくる主張しすぎない辛味が後味を引き締めてくれます。粒なしのなめらかなタイプで、粗挽きのソーセージや肉々しい塊のハムの食感を邪魔せず、パンに塗ったりドレッシングの材料としても使いやすいマスタードです。

 

この練り歯磨きのようなアルミ製のチューブパッケージもかわいい!スプーンいらずで、絞り出すオールドファッションな感覚も気に入っています。

 

赤いチューブは“甘口”で(色だけを見ると“激辛”?!と誤解されることしばしば)粒入りタイプ。バイエルンはミュンヘンの白ソーセージ「ヴァイスヴルスト」に合う甘いマスタードを最初に開発したのが、このパッケージに描かれている ”ヘンデルマイヤーおばさん” だった、という歴史あるメーカーです。

 

戦争の影響でこのマスタードの価格が今夏に上がっていたのですが、次いで、このチューブの素材であるアルミニウムの調達が困難になったことから、日本への輸入が終了することになったそうです。

 

実はこの通知は1か月ほど前に届いていたのですが、今日本にある在庫がなくなり次第販売終了になるということがショックで、なかなか皆さまにお伝えすることができずにおりました。

アインベルクですでに抱えている在庫はあまり多くはないので、きっと年末を前に販売終了となることが想定されます。

 

このマスタードのファンのお客さまは多く、これなしでは困る!という方もたくさんいらっしゃると思います。

 

今回はパッケージの素材の問題なので、今後は同メーカーのガラス瓶など別の形状のものを輸入することを検討しているそうです。

このチューブタイプが使いやすかった~ とは思いますが、背に腹は代えられません。またこの味を楽しめる日が来ることを信じて、業者さんからの連絡を待っている状況です。

ヘンデルマイヤーのマスタードが一時的に欠品になることが想定されますが、どうぞご了承いただければと思います。

 

これに合わせて、ヘンデルマイヤーの中辛マスタードが入っているギフトセットA(6,000円) の内容を11月から変更します。詳細は追ってお知らせすることになりますが、ヘンデルマイヤーなしでも魅力的なセットになるように考えています。

 

私たちが受ける戦争の影響はまだこの程度です。命を落とすわけでも路頭に迷うわけでもありません。

ニュースに接するたびに気持ちが落ち込みますが、日々の生活のささやかな幸せをこれからも皆さまに届けられるように、努力を続けていきたいと思います。

 

ちょっと暗い話題ですみませんでした…。

店頭では、皆さまを明るく笑顔でお出迎えします!