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味わえる喜び

毎年2月末から始まる春のスギ花粉の季節は、娘にとって花粉アレルギーが発症する苦しい時期です。

 

そんな感じの症状が、突然昨夜から娘に始まってしまいました。

なんだろう… 風邪かな?と思って体温を測ったりしたのですが熱はなく、鼻水と鼻づまりの症状だけがいきなりひどく現われました。

ここ数日で急に秋が深まり気温が下がってきたせいでしょうか。

 

昼間、自然の中で遊びまわっていたので、秋の花粉アレルギーが発症してしまったのか…。

とにかく鼻づまりが苦しそうです。かわいそう。

 

昨夜はベッドに入っても鼻が詰まって寝られません。鼻づまりに睡魔が勝ってようやく娘が寝入ったのは22時半くらい。添い寝している私の方が何度も寝落ちてしまいました。

 

小学校の秋休み最終日の今日、祖父母の家でゆっくり過ごしてもらうことにしました。

朝迎えに来たおじいちゃんの車に乗り込み「行ってきま-す!」と元気に手を振る彼女の鼻はまだ詰まっています。

 

夕方、店に戻ってきた娘はやっぱり鼻だけがぐずんぐずん… ぐが…ぐぐ…。

たぶん鼻をかみすぎて酸欠になっているのかぼーっとしています。でも「お腹すいたー」と主張するところは変わりがなくて、ちょっと笑ってしまいます。

 

おにぎりだのお菓子だのを食べながらおとなしくお店のクローズ作業を待っています。

 

ようやく帰路についたその途上、鼻声の娘がぽつりぽつりと言いました。

 

「なんだか私だけがかなしい人みたいだよ。 何を食べても味がしないんだもん。おいしいって感じられないんだよ。つらいんだよ…。もう一生おいしいって思えないのかもしれないんだよ。いやだよ、こんなの。」

 

食いしん坊の娘にとっては、これはつらいことでしょう。もう人生終わったくらいの絶望的な顔をしています。

 

とりあえず鼻の詰まりを少しでも解消させるべく、帰宅一番お風呂の用意をして一緒に入りました。暖かい蒸気を吸えば鼻呼吸が楽になります。

 

まだ悲しみの淵にいる娘に夕食に食べたいものを聞くとオムライスと答えが返ってきました。こんな時くらいリクエストに応えてあげたい。

 

お風呂から上がってすぐにオムライスを作り始めました。お店でおにぎりも食べているから、小さめオムライス。大好きなベーコンを入れてあります。

 

「ケチャップかけてもいい?」と聞くと、「うん、"おだいじに" って書いてね」と返ってきました。

ちょっと意表を突かれて笑っちゃいました。

 

なかなか、ケチャップで書くのは難しい!読めますかね、『おだいじに』。

 

娘はやや難儀しながら「お・だ・い・じ・に」と読み終わると、オムライスをモリモリ食べ始めました。

食欲が旺盛で何よりです。

 

お風呂で温まったおかげか少し鼻の通りが良くなったようで、「ちゃんと味が分かるよ」となめこのお味噌汁も一緒に平らげてくれました。

 

ようやく食事をちゃんと味わえたことで、気分が落ち着いた様子です。

あの絶望的な表情から一転、いつもの笑顔に戻っていました。良かった…。

この日は少し苦しそうにしながらも、無事に入眠に至りました。

 

子どもながらに、食べ物の味をちゃんと感じながら食事を楽しんでいたんだなぁとあらためて思いました。

娘自身も、鼻づまりになるだけで、こんなに食べ物の味が分からなくなることにショックを受けていましたが、体調がしっかりしていないと、楽しい毎日が送れないことをきちんと認識したようです。

いつもは入浴後に濡れた髪の毛を乾かすのを億劫にしていましたがちゃんと乾かさないと風邪を引くよ、とか、だらだら起きていたら、次の日元気で過ごせなくて、もっと体の元気がなくなるよ、とか。

 

元気だから食べるものが美味しい。

美味しく食べられるから元気で過ごせる。

 

大人にも言えることですよね。

これかれどんどん寒くなってくるので、私も油断しないように体調管理をあらためて気をつけようと思いました。

年末の繁忙期に向けて、風邪を引いている暇はないですからね。

 

美味しそうにオムライスをほおばる娘を見て、店主もちょっと安心したようです。

「手作りの愛情って、大事だねぇ」と。

 

確かに。だから美味しく食べられたのかな?!