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ホッツェンプロッツのソーセージ

 

大変ありがたいことに、時々お客さまからいただきものをすることがあります。

私たちが作るハムやソーセージをご愛食いただくだけで、十分嬉しくありがたいのですが、お客さまのそうした優しいご厚意に心から感謝し、ありがたく頂戴しております。

 

お盆の頃、開店当初よりアインベルクをご利用くださっているS様ご夫妻が、夏のご旅行のお土産を持ってきてくださいました。

なんと、「トリュフマスタード」です✨✨✨

 

トリュフなどという結構なものを、私は食べたことがあったかしら…

それがカジュアルにマスタードに入っているなんて、ヨーロッパの食文化の懐の深さを感じます。

 

「トリュフマスタードにはどんなソーセージやハムが合うのか、ぜひ教えてほしくて…」というご謙遜の言葉を添えて、お土産を手渡してくださいました。とても恐縮した私たちは数日の間、洗練されたデザインの瓶をただ眺めて過ごしたのです。

 

ようやく覚悟を決めて、蓋を開けてみると、「あ~、これがトリュフなのか~」という得も言われぬ良い香り。

トリュフ探しには豚が使われる、と聞いたことがありますが、豚肉とトリュフが合うのはそのせい…… ではないですね😅

 

店主とディスカッションをした結果、腸詰めならシンプルな焼きソーセージが合うのではないか、という話になり、ある晩「チューリンガー」で試してみることにしました。

 

 

「チューリンガー」はノンスモークタイプの粗挽きソーセージです。ボイルはせず弱火でじっくり香ばしく焼いて食します。添加物を使用しない古典的なレシピで作るシンプルなオールポークのソーセージに、いざトリュフマスタードをつけて食べ始めた頃、先に夕食を済ませた娘が隣で本を読み始めました。

 

最近、滑舌よく音読をする娘が読んでいたのは『大どろぼうホッツェンプロッツ』です。

 

恥ずかしながらこの名作を知ったのは、アインベルクを開店して間もない頃でした。

 

お孫さんを連れた年配のご婦人がご来店され、最近お孫さんに読んであげた本に、ソーセージとザワークラウトを食べるシーンが出てきて、美味しそうだなーと思ったんです、とのこと。それがこの本でした。

 

50年以上前にドイツで書かれた3部作で、2作目の『ふたたびあらわる』編の冒頭、いきなり出てきます:

 

【 ある日のこと、カスパールのおばあさんは、お昼に、台所のレンジの前にたって、ソーセージをやいていました。 レンジの上には、フライパンとならんで、ザワークラウトのはいった大きななべが、かかっていました。ザワークラウトから、ほかほかゆげがあがり、ソーセージはジュウジュウ音をたてています。家じゅうに、なんともいえない、いいにおいがあふれていました。】 

 

娘は楽しそうにそれぞれの登場人物になりきって物語りを読み進めていきます。

カスパールのおばあさんが焼いていたであろうソーセージを、日本の小さな食卓で食べながらお話を聞く偶然。

おばあさんが焼いていたソーセージは何だったのか?という議論で店主と盛り上がったりして、賑やかな夕食になりました。

 

肝心のトリュフマスタードとの相性ですが、私たちの個人的な見解としては、マスタード自体が温かい状態の方が酸味がまろやかになり、トリュフの香りもより際立つように思いました。チューリンガーなら、焼き立ての腸詰めにフライパンの上でマスタードを絡める、という感じです。

 

それか、たっぷりキノコの生クリームソースにマスタードを加え、豚肉や鶏肉のソテーに絡めたり…

 

と思って作ったのが、この一皿 ↓

 

この時は豚肉、たまねぎ、マッシュルーム、ショートパスタだけだったのですが、他の種類のキノコやカボチャ、じゃがいもを入れてもボリュームが出て美味しかったです。バゲットをたっぷりのソースにつけて、白ワインとともに…。

 

 

バターやガーリックなどは入れずに、生クリームとトリュフマスタード、塩・黒コショウだけのシンプルな味付けで十分!トリュフの豊かな香りを存分に楽しめました。

こんなに手軽に美味しい一品が作れるのなら、少々値が張っても今度は自腹を切って……。

 

アインベルクのハムソーとのマリアージュ成立にはまだ至っていませんが、大切に大切に、味わわせていただいております。

S様ご夫妻、お心遣いを本当にありがとうございます。

次回ご来店の際に、あらためて感想とお礼をお伝えしたいと思います。